夏至について本気で考えたらこうなった
なんというか・・・こういう偏った恋愛系小説はなんとなく書けてしまう変人です。
<夏至>
もともとテンションが高い方ではないのを私はよく知っているが、ここ2、3日の彼の機嫌は梅雨のようにジトジトとした恨めしい感じだった。
私と彼が付き合い始めて半年になるが、彼はその辺の男とは違っていて面白い。
休日の一日デートの日はどんな天候でも、彼は長袖に長ズボン、厚手の手袋に日傘、サングラスと紫外線から完璧ガードな服装をしている。
彼曰く、
「男性であろうが女性であろうが関係ない。太陽の光というのは綺麗な肌の天敵だよ。」
確かに彼の素肌は、雪よりも白く、氷よりも肌触りがいい。
だから、どんどん太陽の出ている時間が長くなってきていて、彼はどうすることもできない苛立ちをずっと太陽に向けているのだろう。そんな苛立った口元から覗かせる大きな八重歯は私は好きだけれども。
また、彼は野菜ジュースが異様に大好きだ。
彼の大きなトートバックには必ずといってもいいほど、野菜ジュースが2、3本入っている。ことあるごとに野菜ジュースを凄い勢いで飲んだりする。
彼曰く、
「何かが足りないっていうのがあまり好きじゃないんだ。だからそれを補うため欠かさず飲んでるだけさ。」
ロマンティックなムードになっても野菜ジュースを取り出して飲みだすから、私はちょっと好きじゃないな。
そして、彼はとても時間にルーズなところがある。1時間くらいの遅刻は当たり前で、時には昼に待ち合わせたのに夜に来たりする。
彼曰く、
「時間に追われるのが好きじゃないんだ。時間はほっといてもなくならないものだからね。」
どんなに遅くなっても謝らないけど、そんなナルシストな彼をわかってあげられるのは私だけなんだって思うだけで、自然と笑っちゃうわ。
夏至の日に彼がこう言った。
「・・・もう我慢の限界。」彼は長く伸びた爪で私のあごに手を伸ばして、「来週、僕と一緒に知り合いの洋館に行かないか? 君に新しい世界を見せてあげるよ」
本当! 嬉しい、と私は答えた。半年付き合ってそろそろ私たちも恋人として新しいステージに上がらなきゃね。
彼は、今までないくらい口元を綻ばせた。私の好きな八重歯が口元から溢れ出て、なぜかそれはコウモリを連想させた。彼の長いまつげを見ながら、とても幻想的な彼に私はもう一度心を奪われた。