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むじゃき

なんでもかんでもアウトプット 一日一新 抽象化する思考

「この我のものとなれ、勇者よ」

「この我のものとなれ、勇者よ」
 テレビからそんな謳い文句が流れてきた。新進気鋭のおもちゃ会社から発売された「しゃべるっ!魔王人形」のCMだ。
 この魔王人形は1000年前に勇者が倒した魔王をモデルに作られたらしい。ドスの効いた恐ろしい形相であったであろう顔は、目が大きく、角も短い、とてもファンシーな雰囲気。3等身あるかないかの体躯は、子供の遊び相手にちょうどいい。
 しかし、この人形、子供の間はもちろん、大人の間でも大きなブームになっていた。
 この人形はしゃべるだけでなく、自力で動き、家事ロボットの真似事までこなすことができる。腕から風が出て、掃除をしてくれたり、コンセントも背中に付いているので、ちょっとした出張充電もできる。
 それくらいロボットにもできるじゃないかと思うかもしれないが、ロボットはあくまでロボットは。効率化がはかられたその機械的な見た目は日常生活にはあまり溶け込めていない。その点、巷のロボットとは違い、サイズが小さく見た目はとてもファンシーであるため、ソファの上でも違和感がなく、特にご老人や女性に受けている。
「な、なんと全世界1億台間近っ!この後、社長自ら緊急記者会見!」
 ついに1億台を超えるのかと私は少し驚いた。
 しゃべるっ!魔王人形1億台突破した時にはおそらくスゴイニュースになるだろうと思っていた。それは新進気鋭のおもちゃ会社が公約としてこんなことをかがけていたからだ。
「1億台突破した暁には皆様にお代を全額返金させていただきます、今まで頂いたすべてを皆様のもとにお返しいたします。」
 無茶苦茶な公約で当時、話題になったが、まさか達成されるとは微塵も思っていなかった。
 テレビの画面が切り替わった。
 スーツを着た少し色黒の男性が映っている。社長のようだ。すでに会見は始まっていた。
「・・・がとうございます。さて、1億台突破の公約を今ここで宣言させて頂きます」 フラッシュが社長を包み込んだ。
 包み込むと同時にある異変に気付いた。
 社長の背中に翼が付いていることに。報道陣も気付いたのか、フラッシュが止んでいく。すると、そこにはスーツを着た社長ではなく、等身大のしゃべるっ!魔王人形がいた。いや、人形ではない。元ネタになった魔王そのものだった。
「お返しいたします。私が受けた屈辱を。私が感じた憎悪を。私が触れた死の恐怖を。そのままお返ししてあげますよ」
 魔王はニヤリと笑った。私の隣にいた、しゃべるっ!魔王人形もニヤリと笑った。